この記事ではランニングマシン使用時の傾斜角度の設定について書いています。
ランニングマシンの傾斜設定にお悩みの方の参考になれば幸いです。
天候に左右されないランニングマシン
マラソンブームということもあり、マラソンのために定期的にランニングを行っているって方は多いのではないでしょうか。
外で走ると気持ちが良いですよね。
ただ、屋外でのランニングは天候に左右されてしまいます。
そのため、屋内でランニングマシンも使っているって方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ランニングマシンなら天候に左右されることもありませんし、飲み物も手元に置くことができていつでも飲むことができます。
また、スピードを一定に設定することで同じペースで走り続ける練習にもなります。
ランニングマシンはうまく使うととても便利なトレーニングツールですよね。
ちなみにランニングマシンと言っていますが、ルームランナーやトレッドミルという呼び方もあります。
どれも同じなのでここではランニングマシンという呼び方でご案内致します。
さて、そのランニングマシン利用時に傾斜の設定はされていますか?
傾斜ゼロのフラットのままで走っている方もよく見かけますが、マラソンのためにランニングマシンを使うのであれば、1%の傾斜をつけて走ると効果的なようです。
屋外ランニングとランニングマシンとのエネルギーコストの違いを調査
屋内にあるランニングマシンを使って走る場合、屋外でランニングをする時と違って空気抵抗がありません。
屋外では自分が動いているわけですが、ランニングマシンの場合はその場で足元のベルトが動いているだけですからね。
地面を蹴る必要もなく、その場で飛び跳ねるだけで走ったような感じになります。
空気抵抗が掛からない分、屋外ランニングに比べると消費エネルギーが少なくなってしまいます。
マラソンに参加することを考えるのであれば、できれば同じようにエネルギーが使われるような状態にしたいところ。
ということで、ランニングマシンに若干傾斜をつけることでエネルギーの消費が増え、屋外ランニングの場合の消費エネルギーに近づけることができます。
ただ、どの程度の角度で行うと屋外ランニングの状態に近づくのかはよくわかっていませんでした。
ということで、英国ブライトン大学の研究グループは、屋外ランニングのエネルギーコストに最も近いランニングマシンの傾斜角度を調べました。*1
研究の対象者はランニングマシンの使用に徹底的に慣れている9人のエリートランナー。
バリバリランニングもしているし、ランニングマシンの利用にもめっちゃ慣れているっていう人を対象にしたわけですね。
参加者9人に
- 10.5km/h
- 12.0km/h
- 13.5km/h
- 15.0km/h
- 16.5km/h
- 18.0km/h
以上の6種類のスピードを6分ずつ、6分間の休憩を挟みながら走ってもらいました。
結構なスピードですね。
一番遅いスピードでもマラソンで4時間ペースの速度です。
エリートランナーなのでこれくらいのスピードで実験が行われています。
また、それぞれのスピードで走ることに加え、
- ランニングマシン傾斜0%
- ランニングマシン傾斜1%
- ランニングマシン傾斜2%
- ランニングマシン傾斜3%
- 平坦な場所でのランニング
という条件で走ってもらいました。
どの傾斜角度に設定すると屋外ランニングと同じようなエネルギー消費になるのかを調べたわけですね。
1%の傾斜を付けて走ると屋外ランニングに近くなる
- 実験の結果、時速10.5km、12.0kmの屋外ランニングは、0%、1%傾斜を付けたランニングマシンと同じくらいで、2%、3%の傾斜をつけた場合はランニングマシンの方が酸素摂取量が多かった(しんどかった)。
- 時速13.5kmで屋外を走った場合、傾斜0%、2%、3%の時は酸素摂取量が全然違うが、1%の時は近い状態だった。
- 時速15.0km、16.5kmで屋外を走った場合、傾斜1%、2%の時とだいたい同じで、0%と3%の場合はかなり違いがあった。
- 時速18.0kmで屋外を走った場合、1%と2%の間位の酸素摂取量ではあったが、0~3%どの傾斜であっても統計学上有意差はなかった。
以上のことから、時速10.5km~18.0kmで走る場合、ランニングマシンは傾斜1%付けると屋外ランニングと同じくらいのエネルギー消費になるとのこと。
傾斜0%では屋外を走るよりも随分と楽になり、2~3%だと逆にきつくなるということですね。
よって、マラソンのためにランニングマシンを使うのであれば傾斜を1%つけて走るようにしましょう。
マラソンが目的でなければ傾斜は気にしなくてOK
マラソンでの記録向上が目的でランニングマシンで走る時には傾斜を1%付けましょうってことですね。
正確には時速10.5~18.0km/hで走る場合は1%の傾斜を付けましょうってことです。
それ以上のスピードの場合、もしくはそれ以下のスピードの場合は違うかもしれないので注意は必要です。
ただし、この傾斜の設定もあくまでランニングパフォーマンスを高めることが目的であればの話です。
ダイエットのため、ストレス解消のためにランニングマシンを使っている場合は傾斜は好きなように設定すれば良いかと思います。
傾斜を付けるのが好きなのであれば付けて良いでしょうし、フラットな床を走りたいっていうなら傾斜は付けずに走れば良いでしょう。
また、マラソンに参加するといっても完走が目標という初心者ランナーもそれほど傾斜を気にする必要はありません。
速度を上げても傾斜を付けても、どっちでも心肺機能は同じように鍛えられるという報告もあるのでそこまで気にする必要はなく、とりあえず頑張って走ればマラソン完走する走力はつくでしょう。*2
レクリエーションとして走るのではなく、強度としてマラソンに参加するのであれば屋外との違いを考える必要があります。
競技特異性というのを考えないといけないからですね。
一番良いのは屋外ランニングです。
マラソンと同じ走り方になりますからね。
できるだけ外で走るのが最も効果的です。
実際心肺機能を鍛えるだけならトレッドミルは効果的ですが、筋出力を高めるには不十分だという報告もあります。*3
また、トレッドミルで走る方が走り始めのペースが遅いにも関わらず10km走のタイムが早くなったという報告もあり*4、屋外ランニングと全く同じというわけにはいきません。
ただ、最初にも言ったように屋外ランニングは天候に左右されてしまいます。
雨の中でも関係なくランニングを行うという猛者もいるかとは思いますが、無理をしてコンディションを崩してしまっては元も子もありません。
天気の悪い時は屋内のランニングマシンを活用すると良いでしょう。
濡れた路面で足を取られてしまい、怪我をするというリスクも回避できるので、無理に外を走る必要はないでしょう。
真夏の炎天下の場合も同様です。
暑い中無理にランニングを行えば熱中症で命にかかわるかもしれません。
まあ、真夏の場合は暑さで運動強度が落ちてしまうので、下手すれば涼しい屋内でランニングマシンを高い強度で走るほうが効果的かもしれません。
オリンピックのように真夏に走るのであれば暑い環境で走ることに慣れる必要はあるでしょうけど、一般ランナーが走るのは大抵冬場なので真夏に無理する必要はないでしょう。
そんなランニングマシン利用時でも屋外ランニングに近づける方法が
「傾斜を1%付ける」
って方法となります。
できるだけ屋外ランニング時と同じような状況を作ることでランニングパフォーマンスの向上に役立ちます。
マラソンのためにランニングマシンを使うって時には、ぜひ1%の傾斜をお試しください。
参考文献
*1:A 1% treadmill grade most accurately reflects the energetic cost of outdoor running. - PubMed - NCBI
*2:VO2max during horizontal and inclined treadmill running. - PubMed - NCBI
*3:The effects of incline and level-grade high-intensity interval treadmill training on running economy and muscle power in well-trained distance runn... - PubMed - NCBI
*4:Running performance, pace strategy, and thermoregulation differ between a treadmill and indoor track. - PubMed - NCBI