近年、高齢者のロコモティブシンドロームが問題になっています。
サルコペニアとも言われます。
加齢による運動器障害のことで、椅子からスムーズに立ち上がれなかったり、階段の上り下りがゆっくりでしかできなくなったりします。
もちろん生活にも大きな影響を及ぼします。
ロコモティブシンドローム予防のためには筋肉量・筋力の強化が大切です。
そのためには筋力トレーニングが大切です。
ただ、高齢者が筋力トレーニングを行う場合、重さや回数などをどう設定すれば良いのかわかっていませんでした。
若者と同じ基準で行ったら良いのか、高齢者は高齢者なりのやり方で行った方が良いのかわからないといった感じです。
そこでドイツのポツダム大学の研究グループが健康な高齢者に対する筋トレの内容に関して調査しました。*1
高齢者に対する筋トレ研究をまとめた
ドイツのポツダム大学の研究グループは、1984年1月から2015年6月までに発表された健康な高齢者(平均年齢65歳以上)に対する筋トレの効果を調べた研究データをまとめています。
候補に上がった506件の論文のうち、条件の合う25件の論文に絞り込み、そのデータをまとめて分析を行いました。
高齢者に対する最適な筋トレ内容とは?
高齢者への筋トレに関する文献をまとめたところ、高齢者に対して有効であろうと考えられるトレーニング内容がわかりました。
その内容を見てみましょう。
筋力をつけるためには
・週2回のトレーニング頻度
・各種目2~3セット
・各セット7~9回反復する
・1回につき4秒かけて行う
・セット間には60秒の休憩を挟む
筋肉をつけるためには
・50~53週間のトレーニング期間が必要
・週3回のトレーニング頻度
・51~69%1RMの強度
・各種目2~3セット
・各セット7~9回繰り返す
・1回につき6秒かける
・セット間は120秒休憩
高齢者への筋トレ内容は若年者とほとんど変わらない
「筋肉」をつける場合と「筋力」をつける場合とではトレーニングの内容が変わってくるわけなんですが、ざっくりとまとめてみると、
- トレーニングの頻度は週2~3回実施
- 反復回数は7~9回で少し余裕を持つ
- セット数は2~3セット
- 1回につき4~6秒かけてゆっくり繰り返す
- セット間は60~120秒の休憩を挟む
という内容になります。
若年者の筋トレ内容とほとんど変わらないといったところでしょうか。
唯一違うと感じるのが反復速度(テンポ)で、若干ゆっくりめに行うほうが良いという感じでしょうか。
ゆっくり行うほうが怪我のリスクも少なくて済みますからね。
ただ、反復スピードに関しては0.5秒から8秒の間であれば筋肉の発達効果に差はないという報告があるので、特別ゆっくりというわけでもなさそうです。
また、筋トレ時には少し余裕を持って行うと良いようですが、ギリギリまで追い込むと血圧の上昇やフォームが崩れることによる怪我のリスクが高まります。
安全にために余裕を持って終えることは安全面を考えると大切でしょう。
まあ、最近の研究では限界まで追い込む必要はなく、一歩手前で終えた方がむしろ効果的という報告もあるので、余裕を持ってトレーニングを終えることに関しても何も問題なさそうです。
まとめ
高齢者が筋トレを行う場合も基本的には若者が行う場合と同じように行えば良いでしょう。
もちろん安全面を考えて「息を止めない」「ギリギリまで追い込まない」といったことには気をつけるようにしましょう。
ぜひロコモティブシンドローム予防のためにも高齢者はしっかりと筋トレを行いましょう。