- 記事要約
- 筋トレのセット間の休憩は1分?
- インターバル1分と3分とで効果の違いを実験
- セット間インターバルは3分で
- インターバル1分と5分を比較した実験
- 論文をまとめても長いインターバルが有効
- 初心者や高齢者の場合はあてはまらないかも
- 休憩時間は3分?それよりも長くても良いの?
- インターバルは自分の感覚で決めても良いかも
- まとめ
- 参考文献
記事要約
筋肉を付けたい(筋肥大したい)ならセット間のインターバルは3~5分取りましょう。
実験では、短いインターバルに比べて長いインターバルを取る方が
- 筋肉が発達しやすい
- 筋力も発達しやすい
- 筋持久力は変わらない
という結果になっています。
筋肉をつけたいならセット間の休憩は1分ではなく3~5分で行いましょう。
筋トレのセット間の休憩は1分?
このブログをご覧の方は定期的に筋トレをしているって方も多いかと思います。
そんな方に質問です。
筋トレのセット間インターバルってどれくらい取っていますか?
筋トレのセット間の休憩時間というのはトレーニングを行う上で非常に重要な要素です。
スポーツクラブに通っている、通ったことのある方なら、筋トレを行う際には1分くらい休憩を挟んで次のセットを行いましょうと案内されたことがあるかと思います。
筋肉を付けるための教科書的な内容でも、30秒~90秒の休憩を挟んで次のセットを行うように書かれています。
セット間の休憩時間が30~90秒という理由として、成長ホルモンやIGF-1といった筋肉の発達に関係するホルモンの量が増えるからってことです。
実際に筋トレを30~90秒のインターバルで行うと成長ホルモンの分泌量が増えることが明らかになっています。
そういう理由もあり、
「筋肉を太くしたいならインターバルは短くしてやれ!」
「休憩は30秒だけで次のセットを行え!」
なんて言われたりしています。
ジムでトレーニングを行なっている人の中には、スマホのタイマー機能を使ってセット間の休憩時間の管理をしている方もいらっしゃるくらいです。
ただ、最近は一時的なホルモンの分泌はそれほど筋肉の発達に影響しないのではないかという報告もあり、このセット間の60~90秒という休憩時間も変わってくるかもしれません。
インターバル1分と3分とで効果の違いを実験
前述のとおり、今までは筋肉の発達にはセット間の休憩時間はだいたい1分程度が良いとされてきました。
幅があっても30~90秒程度のセット間インターバルで行いましょうと言われてきました。
前述のとおり、筋肉を発達させるために必要とされている成長ホルモンなどのホルモン分泌が高まるからです。
しかし、成長ホルモンは筋肉の発達にはそんなに関係ないかもしれません。の記事のように、ホルモン分泌と筋肉の発達は思っていたほど関係がないという報告が増えています。
米国ニューヨーク市立大学リーマン校のSchoenfeldらの研究グループは、短い休憩時間(1分)と長い休憩時間(3分)とで筋トレを行なった場合、筋肥大に対してどのような影響を及ぼすかを調べました。*1
実験は、十分に筋トレ経験のある若い男性21人をランダムで
・短い休憩時間グループ(1分)
・長い休憩時間グループ(3分)
に分けて筋力トレーニングを行なってもらいました。
トレーニングの内容は週3回、7種類の筋トレを8~12回、それぞれ3セットずつ行なってもらいました。
セット間の休憩時間以外はごく一般的な筋トレの内容ですね。
比較する項目として、
・最大筋力(ベンチプレスとスクワットの最大重量)
・筋持久力(ベンチプレスを50%1RMで何回行えるか)
・超音波測定による筋肉の厚み測定(力こぶ、二の腕、太もも)
以上の項目をトレーニング開始前と終了後に行い、セット間インターバルの違いがトレーニングの効果にどのような影響を及ぼすのか調べました。
3分の休憩を挟んだ方が効果が高い
実験の結果、1分間の休憩時間を挟むより3分間の休憩時間を挟むほうが良いという結果がでました。
- 最大筋力は、スクワット、ベンチプレスどちらにおいても長い休憩時間を挟んだ方が明らかに向上。
- 筋肉の厚みは、太ももに関しては長い休憩時間を挟んだ方が明らかに発達しており、二の腕に関しても長い休憩時間を挟んだ方が発達の傾向が見られた。
- 筋持久力に関してはどちらのグループも伸びており、グループ間に有意差は見られなかった。
簡単にまとめると
- 最大筋力:3分>1分
- 筋肥大:3分>1分
- 筋持久力:3分≒1分
という結果です。
セット間インターバルは3分で
この研究を参考にするのであれば、筋トレの時には1分間のインターバルより3分間のインターバルを挟んだ方が良いことが明らかですね。
筋力向上はもちろんのこと、筋肥大に関しても3分の方が効果があり、筋持久力に関しても変わらないという結果です。
筋力向上は従来通り
筋力の向上はセット間の休憩の長い方が効果が高いという結果は予想どおりです。
筋力の向上に関しては以前から2分以上の長いインターバルをとって神経系を十分に回復させてから行うように言われてきましたからね。
インターバルが1分という短い時間では後半の疲労が激しく、十分な強度でトレーニングを行うことができません。
1分よりも3分の方が筋肉や神経も回復し、後半まで高い強度でトレーニングを行うことができるので効果的でしょう。
筋肥大もインターバルは1分よりも3分で
筋肥大に関しても1分よりも3分のインターバルを入れた方が良いという結果でした。
これはなかなか注目のポイントです。
成長ホルモンなど筋肉を発達させるホルモンなどは、インターバルを1分から3分に伸ばすことで分泌量は間違いなく少なくなります。
今まではこの成長ホルモンなどが筋肉の発達に大きな役割を担っているので、セット間の休憩時間は1分程度にし、たくさんホルモンを分泌させましょうってされていました。
それにもかかわらず筋肥大効果が高かったということです。
今まで言われていた成長ホルモンなどの成長因子による筋肉への影響は思った以上に少なかったということになりますね。
トレーニング直後の一時的なホルモン濃度の増加よりも、睡眠中の方がホルモン量が多かったりしますしね。
また、最近の研究によると、筋肥大にはトレーニングの量が重要という報告もあります。
疲労で後半の反復回数が大きく減ってしまう1分間のインターバルに比べ、後半の反復回数が減りにくい3分間のインターバルで行う方がトレーニングの量が多いということになります。
トレーニング量が多くなる3分インターバルの方が筋肥大に有効であるということになります。
筋持久力アップ効果も3分でOK
筋持久力に関しても効果は変わらないというのは意外でした。
30秒程度の短い休憩時間で筋肉が回復する前に次のセットを行うのが当たり前とされていましたからね。
筋肉が回復しきらず疲労した状態で行うことで筋肉が適応し、筋持久力が高まるとされていました。
筋肉や神経系が回復する前に次のセットに移りましょうと教科書にも書かれています。
その教科書的な内容が間違いである可能性もでてきました。
もちろん筋持久力に関しては今回紹介した実験だけで判断するわけにはいきません。
今回の実験では、セット間の休憩時間を1分間と3分間とで比べています。
筋持久力向上であれば、30秒程度が良いとされていますので、セット間の休憩時間30秒の場合と3分間の場合とで比べると筋持久力の向上に関する結果は違ってくるかもしれません。
とりあえず、筋持久力に関しては1分のインターバルと3分のインターバルで大きな差はないと考えて良いのではないでしょうか。
インターバル1分と5分を比較した実験
この他にもセット間インターバルは長い方が良いという研究はあります。
英国バーミンガム大学のMcKendryらの研究グループは筋トレのセット間インターバル時間の変化と効果の違いについて調べました。*2
実験は、筋トレ経験のある男性16名を対象に行われました。
16人を
- セット間インターバル1分のグループ8人
- セット間インターバル5分のグループ8人
以上の2つのグループに分けました。
各グループにレッグエクステンション(座って膝を伸ばす筋トレ)を75%RMの強度でそれぞれ4セットずつ行い、その直後にプロテインを25g飲んでもらって筋たんぱくの合成を調べました。
トレーニング後に筋肉の合成具合を調べると、筋トレ直後から4時間経過時においてインターバルが1分のグループよりも5分のグループの方が明らかに筋たんぱく合成が高まったとのこと。
また、24時間経過後の筋たんぱく合成具合に関してはどちらのグループも差はなかったとのこと。
McKendry J, 2016より引用
この研究でも筋トレのインターバルは1分よりも5分が良いということで、やはり長めにインターバルを取るほうが良いようです。
特にこの実験では筋トレ直後の筋組織を取り出して調べており、インターバル1分よりも5分で行う方が筋肥大に有効であるのは間違いなさそうです。
インターバル5分に比べて1分の場合は筋トレの容量が17%低くなっていたということなので、1分の休憩だと後半疲れで反復回数が大きく減ってしまうようです。
その反復回数の減少が筋トレ効果の差に繋がっているようです。
しっかりと休憩を取って筋肉を回復させ、その分しっかりと行う方が筋肉の発達には良いようですね。
論文をまとめても長いインターバルが有効
カナダ・ビクトリア大学のGrgicらは、筋トレのセット間インターバルについて書かれた過去の論文をまとめるという研究を行っています。*3
筋トレを週2回、4週間以上行った研究をまとめてみたところ、セット間インターバルは長くても短くても筋肥大は起きるが、長いインターバルの方が筋肥大効果を引き出すことが示唆されたとのこと。
ただ、研究の数がまだまだ少ないので、もっと調査を行う必要があるとのこと。
初心者や高齢者の場合はあてはまらないかも
筋トレをするなら1分のインターバルよりも3分のインターバルが良いということですね。
ただ、今回の実験の被験者が、「筋トレに十分慣れた若い男性」というところに注意が必要です。
筋トレに慣れた方なら自分の限界ギリギリまで追い込むことができます。
しかし、筋トレに慣れていない方はギリギリまで追いこむことができません。
トレーニングに慣れていない人は心理的限界値が低いので、ギリギリまで追い込むことができないわけですね。
簡単に限界まで力を出し切ることができてしまうと人間の身体はすぐに壊れてしまいます。
そのため、身体が壊れてしまわないように、ある程度余裕を持ったところで脳がブレーキを掛けます。
これが心理的限界です。
心理的限界について少し話をしましょう。
日本の言葉に、火事場の馬鹿力(火事場のクソ力とも言う)って言葉があります。
命の危険に曝されるような状況の場合、身体が壊れることよりも命を守ることの方が優先されることで、脳のリミッター(心理的限界)が外れた状態のことです。
身体を守るために脳が制限を掛けていたのに、力をセーブして死んでしまっては元も子もありませんからね。
脳によるリミッターが外れることで、普段出すことができないような力を発揮することを火事場の馬鹿力と言います。
話を戻します。
トレーニングに慣れていないと脳が自分の身体の限界を分かっていないので、安全を考慮して早めにブレーキを掛けてしまうわけです。
ブレーキを遅らせて怪我してしまうくらいなら、早めにブレーキをかけておこうってことですね。
そのせいで、トレーニング初心者は限界ギリギリまで追いこむことができません。
高齢者の場合も同様で、若い頃のように限界まで追いこむことができない場合が多いです。
女性の場合も心理的限界値が低い傾向にあるので、若い男性ほどギリギリのところまで追い込むことができていないことが多いようです。
スポーツジムに歯を食いしばって唸り声を上げながら筋トレしている女性はまず見かけません。
周りの目を気にして涼しい顔をしているだけかもしれませんが…。
筋トレ初心者、高齢者、女性のように、自分のギリギリまで追い込むことができない人の場合であっても今回の研究と同じように長いセット間インターバルが有効かどうかはわかりません。
セット間に3分間の休憩をとるよりも、セット間は1分間の休憩、セット数を1~2セット多めに行なって筋肉の疲労を感じてもらう方が効果的かもしれません。
休憩時間は3分?それよりも長くても良いの?
また筋トレ経験豊富な人は長い休憩時間の方が良いとすれば、最適な休憩時間はどれくらいなのかを知りたい所。
- 3分が良いのか?
- 5分が良いのか?
- それより長い方が良いのか?
筋トレの効果を高めるために最適な休憩時間も知りたいところです。
ここはこれからの研究を待ちたいところ。
また筋トレに慣れている方であっても、人によって筋肉量に違いが出てきます。
筋肉量の多い方がが疲労物質の蓄積量が多くなります。
溜まった疲労物質の代謝速度にも多少差があるものの、めちゃくちゃ大きく変わることはありません。
ということは、筋肉量によっても回復時間に差が出てくるということ。
筋肉量の違いと最適なセット間の回復時間も知りたいところ。
これも今後の研究待ちですね。
インターバルは自分の感覚で決めても良いかも
長めのインターバルの方が筋肥大に効果的という話でしたが、中にはインターバルの時間を測定するのが気分的に急かされているような感じで嫌だと感じる方もいるかもしれません。
そんな方は自分の感覚でインターバルの時間を決めても良さそうです。
オーストラリア・キャンベラ大学の研究者らが筋トレのセット間の休憩時間とパフォーマンスへの影響について調査を行っています。*4
実験は筋トレ経験のある男性スポーツ選手16人。
筋トレを5レップ5セットという強度の高い内容で行ってもらうのですが、セット間のインターバルを
- 3分
- 5分
- 自分で決める
以上の3種類の方法でトレーニングを行ってもらいました。
実験の結果、自分で休憩時間を決めた場合も休憩時間を3分や5分と決めた場合と休憩時間もパフォーマンスもそれほど変わらないことがわかりました。
自分でセット間の休憩時間決めた場合はセット数を重ねるごとに長くなっていき、207~277秒という休憩時間をとなっていました。
ちょうど3分と5分の間に収まっています。
自分の感覚で身体が回復してから行うようにすれば、その日の体調によっては休憩時間は変わるでしょうし、個人差があるであろう回復力の速さの違いによっても休憩時間に変化が出てくるかもしれません。
セット間の休憩時間を測定しながらするのが嫌という方は、自分の感覚で休憩時間を選ぶようにしても良いのではないでしょうか。
まとめ
とりあえず、筋トレに慣れているって方はいつもよりも長めに休憩を挟んで行ってみてはいかがでしょうか。
まずは1分のセット間インターバル時間を3分にしてみましょう。
今まで教科書どおりにセット間インターバルを1分で行なっていた方は今までと違う刺激によって身体が大きく変化するかもしれませんよ。
基本的には長いセット間インターバルを取りながら筋トレを行い、時々身体に対する刺激に変化を付けるという意味で短めのインターバル(30~60秒程度)で行なってみるのも良いかと思います。
筋肉に対する化学的なストレスが増加し、筋肉の発達を促すことができるかと思います。
もちろん基本はセット間インターバルは長めに取ることを忘れないようにしましょう。
筋トレ初心者、高齢者、女性は心理的限界値が低く、しっかりと限界まで身体を追いこむことができないため、もしかしたら長めのセット間インターバルはそれほど必要ないかもしれません。
初心者、高齢者、女性の場合、まずは教科書通りにセット間インターバルを1分程度で行う方が良いかもです。
またセット数は教科書的には3セット行いましょうと言われますが、ちょっと多めに4~5セット行う方が良いかもしれません。
慣れてきて限界ギリギリまで追い込める様になったらセット間の休憩時間を長めに取るようにしてみてはいかがでしょうか。
ぜひセット間インターバルの時間に気をつけながら筋トレを行なってみてください。
きっと筋トレの効果が高まりますよ。
参考文献
*1:Longer Interset Rest Periods Enhance Muscle Strength and Hypertrophy in Resistance-Trained Men. - PubMed - NCBI
*2:Short inter-set rest blunts resistance exercise-induced increases in myofibrillar protein synthesis and intracellular signalling in young males - McKendry - 2016 - Experimental Physiology - Wiley Online Library
*3:The effects of short versus long inter-set rest intervals in resistance training on measures of muscle hypertrophy: A systematic review. - PubMed - NCBI
*4:The Effect of Self-Paced and Prescribed Inter-Set Rest Strategies on Performance in Strength Training