筋トレの時には息は止めずに行いましょう
筋トレの経験のある人は一度は耳にしたことのある言葉ではないでしょうか。
一般的には力を入れるときに息を吐き、戻す時に息を吸うという方法でしょう。
ベンチプレスなら持ち上げながら息を吐き、下ろしながら息を吸うという感じです。
息を止めて行なうことで血圧が上昇して危険なので、息は止めずに必ず息をしながらトレーニングを行いましょうって言われます。
さて、この筋トレ時に呼吸を止めてはいけないというのは本当でしょうか。
筋トレ時の呼吸に関する研究を見てみましょう。
息を止める効果と危険性
筋トレ中に息を止めてはダメと言われますが、その反対に息を止めるテクニックを「バルサルバ法」って言います。
短時間息を止めることで力が出やすくなるってテクニックです。
腹圧が高まることで体幹が安定し、力が出やすくなるわけですね。*1
ただ、息を止めると血圧が上がって危険なイメージがあります。
息を止めて行なう筋トレの危険性に関する研究を見てみましょう。
心臓へのストレスは変わらなかった
2001年に行われた研究では、短時間息を止めてレッグプレスを行っても心臓へのストレスは変わらなかったという結果が出ています。*2
レッグプレスは脚のトレーニングで血圧の上がりやすい種目とされています。
絶対に息を止めるなと言われる種目ですが、短時間息を止める程度であれば問題はなさそうです。
脳の動脈へのストレスは減少した
2003年に行われた研究では、筋トレ時に息を止めずに行なうより息を止めた方が脳の動脈に対するストレスが11%減少したという結果が出ています。*3
息を止めないようにしながら限界までトレーニングを行なうと余計な力が入って脳の血管に良くないようです。
力む時は一瞬息を止める方がむしろ良いようですね。
健康への影響はわからないが、体幹の安定に効果あり
2013年に行われた研究では、息を止めることで腹圧が高まり、背骨や体幹の安定に効果があるとのこと。
血圧は上がるが血液は流れやすくもなり、健康面への影響はわからないとのこと。*4
血管への影響はよくわからないってことですが、息を止めるほうが腰の保護には間違いなく役立ちそうです。
スクワットやデッドリフトなど腰へのストレスが大きい種目を行なう時は息を止める方が腰の保護に良さそうですね。
また他の種目に関しても体幹が安定すれば力も出やすくなるでしょう。
血圧はもの凄く上昇する
もちろんその逆の結果の研究もあります。
1995年に行われた研究では、男性アスリートにレッグプレスを行ってもらったところ、息を止めた場合の平均血圧は311/284まで上昇、息を止めずに行った場合の平均血圧は198/175という結果が出ています。*5
息を止めると血圧が上がるから息を止めない方が良いという研究ですね。
これだけ血圧が上がることがあれば心臓に問題を抱えている方や血管が脆くなっている方は息を止めずに行なう方が良いかもしれません。
高血圧症の方や糖尿病の方は血管が脆くなっているでしょうから呼吸は止めずに筋トレを行なうほうが安全で良いでしょう。
健康な人は息を止めても良い
- 高齢者や生活習慣病を持つ人は息を止めないほうが良い
- 若い人や健康な人は息を止めても良い
と言った感じでしょうか。
健康な人であれば息を止めた方が腹圧が高まって力が出やすくなり、筋トレの効率も高まるので息を止めてもいいでしょう。
むしろ力を入れる時は普通息が止まりますからね。
息が止まるのは自然なことです。
注意としては、息を止めても1~2秒程度に抑えることです。
1~2秒程度なら問題ありません。
もちろんあまり長い時間息を止めていては当然血圧は上がりまくります。
特にセットの後半、ギリギリ上がるか上がらないかって時は持ち上げる速度がかなり遅くなる場合があります。
そんな時に息を止めていると血圧は上がりまくりなので十分に気をつけましょう。
よくある症状が息んでいたら激しい頭痛に襲われるというものです。
私も経験がありますが、酸欠と血圧の上昇が考えられ、長い時間息を止めると起こります。
当然危険なので十分に気をつけましょう。
余談ですが、私は妻の出産に立ち会いました。
出産時にはタイミングを合わせて思いっきり息むわけですが、1~2秒どころが5秒以上息んでいました。
妻の顔はゆでダコのように真っ赤になっていました。
写真に残したい程見事に真っ赤っ赤です。
血圧も相当上がっていたと思われます。
出産時の女性なので大丈夫だったのでしょうけど、健康に問題のある方が長時間息むというのは危険と思わされた瞬間でした。
呼吸をする場合はタイミングを意識して
呼吸を止めずに筋トレを行なう場合はタイミングが大切です。
呼吸を止めずに筋トレを行なう場合は、
- 息を吸いながら下ろし
- 息を吐きながら上げる(力を入れる)
ようにすれば良いでしょう。
ただ、背中のトレーニングの場合は胸郭の広がりの関係で呼吸のタイミングは逆になるので注意しましょう。
- 息を吸いながら力を入れる
- 息を吐きながらもとに戻す
といった形になります。
まとめ
若い方や健康な方は筋トレ時に短時間呼吸を止めるのは腹圧が高まって腰の保護に役立つ他、筋力も高まり筋トレの効率が良くなるでしょう。
高齢者や健康に不安のある方は呼吸は止めずに筋トレを行なう方が安全で良いかと思われます。
筋トレ時には絶対呼吸をしなければいけないというわけではありません。
1~2秒の短時間呼吸を止めることで筋トレの効率が高まります。
ぜひ上手く活用してみてください。
参考文献
*1:Lumbar spine stability can be augmented with an abdominal belt and/or increased intra-abdominal pressure. - PubMed - NCBI
*2:Left ventricular wall stress during leg-press exercise performed with a brief Valsalva maneuver. - PubMed - NCBI
*3:Resistance exercise, the Valsalva maneuver, and cerebrovascular transmural pressure. - PubMed - NCBI
*4:The Valsalva maneuver: its effect on intra-abdominal pressure and safety issues during resistance exercise. - PubMed - NCBI
*5:Influence of breathing technique on arterial blood pressure during heavy weight lifting. - PubMed - NCBI