世界五大医学雑誌と呼ばれるブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(British Medical Journal)通称BMJに面白い記事が紹介されていたのでご紹介。
飛行機から飛び降りる実験
パラシュートは飛行機から飛び降りる際の死や怪我を防ぐために日常的に使用されています。
ところが、パラシュートで死や怪我を防ぐことができるというエビデンスはほとんどありません。
ということで、ハーバード大学やミシガン大学などの研究グループが飛行機から飛び降りる際のパラシュートの有用性を調査しています。*1
実験は18歳以上の飛行機の乗客92人の内23人(平均年齢38歳、男性13人、女性10人)が協力してくれました。
実験の参加者は
- パラシュートを身につけて飛行機から飛び降りる
- 空のリュックサックを身につけて飛行機から飛び降りる
以上の2つのグループに分かれ、飛行機から飛び降りて地面に到達してから5分以内に死や重大な怪我を調査しました。
また、実験30日後の死や後遺症も調査しています。
さて、実験の結果ですが、飛行機から飛び降りるのにパラシュートを身につけても空のリュックサックを身に着けても死や重大な怪我のリスクに有意差は見られませんでした。
パラシュートを身に着けても効果は変わらない
飛行機から飛び降りるのであればパラシュートを付けても空のリュックサックを背負っても変わらないってことですね。
飛行機から飛び降りる際にパラシュートがなければリュックサックを背負って飛び降りるようにしましょう。
さて今回紹介した実験ですが、嘘ではなく本当に行われた実験です。
その実験中の写真を御覧ください↓
ちゃんと飛行機からリュックサックを背負って飛び降りていますね。
なにも嘘は言っていません。
エビデンスの拡大解釈には注意が必要
この記事はBMJのクリスマスシーズン恒例のジョーク記事のようです。
ただ、世界五大医学雑誌と呼ばれるBMJは伊達じゃありません。
ただのジョークではなく、エビデンスの拡大解釈に気をつけるよう警鐘を鳴らしているわけです。
この実験はランダム化比較試験(無作為化比較試験)と言われている実験方法で、信憑性の高い研究方法のひとつとされています。
エビデンスレベルは1bという上から2番目という信憑性の高さです。
当ブログで紹介している研究でもたびたび出てきている実験方法です。
そんな信憑性の高いランダム化比較試験であっても、ある条件で行った場合でのみそういう結果が出たというだけでしかないということです。
今回の飛行機飛び降り実験であれば、
- 平均標高0.6mの高さ
- 平均速度0km/hの速さ
の飛行機から飛び降りた場合であればパラシュートを背負っていてもリュックサックを背負っていても効果に差がない
- パラシュートを背負った場合(死・怪我0%)
- リュックサックを背負った場合(同上)
というだけです。
これが4000mの高さから飛び降りるのであれば結果は違うでしょう。
この例えは少々大げさではありますが細かいところで挙げると、今回の実験では白人の人が多いわけですが、日本人の場合だと結果は違うかもしれません。
平均年齢38歳で実験が行われていますが、平均年齢70歳の集団が行えば結果は違うかもしれません。
あくまで今回の実験条件での結果でしかないとうことです。
近年「エビデンス」という言葉が使われることが増えていますが、それを拡大解釈してしまうことが多いようです。
今回の実験で言えば、高度4000mから飛び降りても結果は一緒だろうと解釈してしまうようなことです。
エビデンスがあってもあくまでその実験条件の場合の結果でしかないので、拡大解釈しないように気をつけなさいということを今回の研究では教えてくれているわけですね。
当ブログでも度々研究を紹介しているわけですが、あくまである条件で行った場合の結果でしかありません。
まあブログでは見た目を良くするために大げさに書いたりしているわけですが、その研究だけを盲目的に信用してしまわないように気をつけましょう。
当ブログだけでなく、
「研究で証明されています」
みたいにグラフや表を貼り付けているサイトやメディアも多いわけですが、ある条件で行った場合の結果であることを知っておけば下手に騙されることもなくなるのではないでしょうか。
エビデンスはあくまでエビデンス。
参考程度にするようにすると良いのではないでしょうか。