こんにちは。
奈良のパーソナルトレーナー下司です。
最近流行っているサプリメントをひとつ挙げろと言われれば「HMB」を挙げる方は多いのではないでしょうか。
ネット上の広告でもHMBを飲むだけで物凄く筋肉が増えるみたいなことが書かれており、HMBの魅力的な内容に興味を持つ方も少なくないでしょう。
ただ、漠然とHMBは凄いって情報ばかりで
- 危なくないの?
- 本当に効果はあるの?
- どれくらい飲んだらいいの?
といった疑問を持つ方も少なくはないでしょう。
今回はそんなHMBサプリメントについてお話し致します。
HMBとは?
[chat face="20190128052827.png" name="" align="left" border="red" bg="none"]そもそもHMBって何なんですか?[/chat]
確かに最近よく耳にするようにはなりましたが、なんかよくわからないって方も少なくないでしょう。
HMBの正式名称はβ-hydroxy β-methylbutyrateというもので、必須アミノ酸のひとつであるロイシンというアミノ酸の代謝産物のことです。
覚える必要は全くありませんが、とりあえず紹介しました。
いろいろな研究によってロイシンというアミノ酸が筋肉の発達に影響していることが分かっているのですが、その研究過程で見つかったのがHMBです。
ロイシンが体内で代謝されてHMBになるなら、最初からHMBを摂れば良いんじゃない?ってことで飲まれるようになりました。
そしてこのHMBを摂ることで筋肉が劇的に増えるということで近年話題になっています。
広告によっては筋肉増強で使われるステロイドよりも効果があると謳っているものまであります。
ネット広告などで見かけたことのある人もいるのではないでしょうか。
とりあえず、HMBは筋肉を付きやすくするためのサプリメントと覚えておきましょう。
HMBは効果があるのか?
[chat face="20190128052827.png" name="" align="left" border="red" bg="none"]HMBって本当に筋肉が増えるんですか?[/chat]
最近人気があるといっても効果がなかったら意味ありませんよね。
では、HMBに筋肉を増やす効果は本当にあるのか?
HMBに関する研究を見ていきましょう。
HMBは筋トレ初心者や高齢者には効果あり
HMBに関しては近年注目されているっていうこともあってか新しい割には多くの研究が行われています。
飲むだけで筋肉が増えやすくなるということで、高齢化社会における寝たきり予防に効果的かもってことで研究がたくさん行われているわけです。
現時点での研究データをざっくりとまとめてみると、筋トレ初心者及び高齢者は筋トレを行いつつHMBを摂ることで3~6週間で筋肉を0.5~1kg多く増やすことができるといったところです。1 2 3 4 *5
もちろん普通に筋トレをするだけでも筋肉は増えるわけですが、HMBを摂ることで筋肉が付きやすくなるってわけですね。
ということで、筋トレ初心者や高齢者であればHMBを摂ることで筋肉が増えやすくなるのは間違いなさそうです。
筋肉を発達させるためには筋トレを行うことで筋肥大のスイッチを入れる必要があります。
筋肥大のスイッチを入れるにはそれなりに追い込む必要があるわけなんですが、筋トレ初心者や高齢者はなかなか追い込むことができません。
筋トレ初心者は心理的限界値が低いので追い込むことができず、高齢者は心理的限界値の低さに加えて関節等の不調によって追い込めないという問題があります。
HMBを摂ることで筋肥大のスイッチを入れることができるので、筋トレでなかなか追い込めない筋トレ初心者や高齢者には効果があるのかと思われます。
同じように考えれば男性に比べて心理的限界値が低い女性もHMBを摂ることで筋肉の発達が期待できるかもしれません。
ということで、筋トレ初心者や高齢者が筋トレをしつつHMBを摂るのは良いのではないでしょうか。
HMBの効果的な摂り方とは?
[chat face="20190128052827.png" name="" align="left" border="red" bg="none"]HMBってどうやって摂れば良いの?[/chat]
摂取方法に関しても様々なデータを集めることである程度明らかになっておりまして、
- 現時点での報告によると、効果の出る最低摂取量は1.5g/日、3g/日で高い効果が得られ、それ以上摂取しても筋肥大に影響を及ぼさない。*6
- HMBは1日3gを朝食・昼食もしくは運動前・就寝前に1gずつ分けて摂ることを推奨。*7
という研究の結果が出ています。
HMBの摂取量は1日3gを
- 朝食時・昼食時・就寝前
もしくは
- 朝食時・筋トレ前・就寝前
といった感じで摂れば良いでしょう。
筋トレ経験のある人にはHMBの効果はほとんどなし
[chat face="20190128052827.png" name="" align="left" border="red" bg="none"]HMBって筋トレ初心者や高齢者以外にも効果あるの?[/chat]
筋トレ初心者と高齢者に関してはHMBで筋肥大効果が高まるって紹介しましたが、筋トレ経験のある人の場合はHMBを飲んでも効果があるかははっきりしていません。
研究の結果にもバラツキが見られてまして
という研究結果が報告されています。
ということで、HMBの筋肥大効果に関しては筋トレ経験のある人には効果がないか、あっても長期的に摂った場合若干の変化が見られるかといった具合のようです。
また、2019年にはホエイプロテインにロイシンもしくはHMBを加えたサプリメントを飲んだ場合の筋肥大・筋力増強効果について研究が行われています。*17
12週間筋トレをしつつホエイプロテイン+ロイシンもしくはホエイプロテイン+HMBを摂ったところ、どちらも同じように筋肥大・筋力が向上しており、有意差は見られなかったとのことです。
ということで、十分に筋トレ経験のある人の場合はHMBを摂っても効果はないか、あってもちょっとだけって言えそうです。
HMBを摂ることで筋トレの効果が減るってことはなさそうなので、経済的に余裕のある方であれば効果を期待して摂っておくと良いかもしれません。
経済的にそんな余裕はないって方はHMBではなくクレアチンとかEAAといった確実に効果が期待できる他のサプリメントを摂る方が良いでしょう。
HMBは筋トレ初心者や高齢者には良いけど筋トレ経験者にはイマイチ
ざっくりまとめると、HMBは筋トレ初心者や高齢者にはほぼ間違いなく効果はあるでしょう。
ただ、筋トレ経験者の場合はそこまでの効果は期待できないかもしれません。
あっても効果はごく僅かなものでしょう。
もちろんここまで紹介した研究の結果はあくまで現時点でのことです。
数年後にはコロッと変わって「筋トレ経験者にもHMBは効果的!」みたいな研究が出てくるかもしれません。
今後の研究に期待しましょう。
HMBはステロイドよりも効果がある?
[chat face="20190128052827.png" name="" align="left" border="red" bg="none"]HMBがステロイドより効果があるって本当?[/chat]
そういう話ありますよね。
ネットでチラホラと
みたいに謳った広告を見かけたことがあるのではないでしょうか。
個人に合わせた広告が表示されたりするので、私のブログを見るような方だと見たことのある方が多いかもしれません。
私のブログの問い合わせにも
「紹介料あげるからHMBの広告載せてくれ」
みたいな話が度々届いています。
クローズドアフィリエイトってやつですね。
胡散臭くて返事も返さず放っているわけですが…。
そんなHMBは筋肥大に劇的に効果があるって広告ですが、一応元になった研究があるようです。
どうでも良いんですが、どんな研究か見てみましょう。
- 2014年に行われた研究によると、筋トレ経験者にHMBを1日3g摂りながら12週間トレーニングをしてもらったところ、筋肉が7.4kg増加した。(対照群は2.1kgの増加)*18
- 2016年に行われた研究によると、筋トレ経験者にHMBを1日3gとATP400mg摂りながら12週間トレーニングを行ったところ、筋肉量が12.7%(8.5kg)、筋力が23.5%増加した。*19
という研究結果があります。
この変化が多いのか少ないのかよくわからないって方もいるかもしれませんが、筋トレをガンガンしているボディービルダーが1年間必死で筋トレをしまくって2~3kg増えたら万歳と言えばわかるでしょうか。
筋トレ初心者であればまだしも、筋トレ経験者がさらに筋肉を増やすというのはなかなか難しいわけです。
3ヶ月ほどで8kgも筋肉が増えたら恐ろしい変化と言えます。
HMBの広告なんかだとこれらの研究結果を元にHMBを摂ると劇的に筋肉を増やすことができると謳っているようです。
本当にコレくらい筋肉が増えるならHMBは喜んで飲みます。
さて、ここで筋肉を増やすことで有名なアナボリックステロイド(筋肉増強剤)に関する研究も見てみましょう。
ステロイド注射を打ちながら筋トレを行うというなかなか真似のできない研究です。
大変貴重なデータと言えるでしょう。
アナボリックステロイド(筋肉増強剤)を使うと確実に筋肉量は増加します。
この研究でもやっぱりステロイドの効果は凄くて、わずか10週間で6.1kgも筋肉量が増加しています。
恐ろしい筋肉の増加具合です。
大抵のスポーツは筋肉量が増えるとパフォーマンスが向上します。
アナボリックステロイドを使うと筋肉が増えて間違いなくパフォーマンスは上がります。
当然そんなズルはダメでして、アナボリックステロイドはドーピング対象となっているわけです。
ドーピングに引っかかった選手には厳しい罰則が待っているわけです。
特にパワーや筋力の要素の強い競技に関してはチェックが厳しくなっています。
それにもかかわらず、
速く走りたい
遠くに投げたい
ホームランを打ちたい
そんな選手がアナボリックステロイドに手を出してしまうわけです。
バレなければ確実に競技パフォーマンスが高まり良い結果が得られるからです。
トップアスリートがバレるというリスクを負ってでも使おうとするくらい劇的な効果が得られてしまうのがアナボリックステロイドです。
そんな恐ろしく効果のあるアナボリックステロイドを使っても10週間で筋肉量は6.1kgの増加でした。
筋トレ経験者が10週間でこれだけ筋肉が増えるというのはとんでもない変化と言えます。
それに対し、先程紹介した研究ではただのサプリメントであるHMBを摂ると7.4kgとか8.5kgも筋肉量が増加するという結果が出たわけです。
しかも筋トレ経験者が12週間で8kgも筋肉が増えるというのです。
普通なら明らかにありえない結果と言えるでしょう。
かなり怪しい研究ですね。
他の多くの研究では筋トレ経験者がHMBを摂ってもほとんど意味がないか若干効果がある程度にとどまっているところから考えると、この怪しい研究は測定方法を間違っているか、対象者に何らかの問題があるのではないかと考えられます。
ということで、HMBはステロイドよりも効果があるって話の元となった論文は信憑性が非常に低く、全く信用に値しないということですね。
うまい話には裏があるわけですね。
わざわざ論文まで調べる人の方が少ないでしょうから、つい信用してしまう気持ちもわからんでもないですが…。
HMBの効果・摂り方まとめ
HMBに関してまとめてみましょう。
- 筋トレ初心者や高齢者には効果が期待できる
- 筋トレ経験者には多少の効果があるかもしれない
- 摂取量は1日1.5~3g
- 摂取タイミングは朝食・昼食もしくはトレーニング前・就寝前の1日3回
といった感じです。
筋トレ初心者や高齢者であれば試してみても良いかもしれません。
筋トレ経験者も他の筋肥大に有効なサプリメントであるプロテインやクレアチンを摂った上でまだ金銭的に余裕があるのであればHMBを試しても良いのではないでしょうか。
ただ、アナボリックステロイドよりも効果があるというわけではありませんので、過度な期待はしないようにご注意ください。
- HMBって本当に効果があるのか?
- どれくらい効果があるのか?
- どうやって摂れば良いのか?
そんな疑問を持っていた方の参考になれば幸いです。
参考文献
*1:Effects of beta-hydroxy-beta-methylbutyrate (HMB) on exercise performance and body composition across varying levels of age, sex, and training experience: A review | Nutrition & Metabolism | Full Text
*2:Beta-hydroxy-beta-methylbutyrate ingestion, Part I: effects on strength and fat free mass. - PubMed - NCBI
*3:Effect of leucine metabolite beta-hydroxy-beta-methylbutyrate on muscle metabolism during resistance exercise testing.
*4:Nutritional supplementation of the leucine metabolite beta-hydroxy-beta-methylbutyrate (hmb) during resistance training. - PubMed - NCBI
*5:Beta-hydroxy-beta-methylbutyrate (HMB) supplementation and the promotion of muscle growth and strength. - PubMed - NCBI
*6:Beta-hydroxy-beta-methylbutyrate ingestion, Part I: effects on strength and fat free mass. - PubMed - NCBI
*7:beta-hydroxy-beta-methylbutyrate (HMB) kinetics and the influence of glucose ingestion in humans. - PubMed - NCBI
*8:Beta-hydroxy-beta-methylbutyrate ingestion, Part I: effects on strength and fat free mass. - PubMed - NCBI
*9:Beta-hydroxy-beta-methylbutyrate ingestion, part II: effects on hematology, hepatic and renal function. - PubMed - NCBI
*10:International Society of Sports Nutrition Position Stand: beta-hydroxy-beta-methylbutyrate (HMB). - PubMed - NCBI
*11:The effect of beta-hydroxy beta-methylbutyrate on muscular strength and body composition in collegiate football players. - PubMed - NCBI
*12:Beta-hydroxy-beta-methylbutyrate (HMB) supplementation does not affect changes in strength or body composition during resistance training in traine... - PubMed - NCBI
*13:Effects of calcium beta-hydroxy-beta-methylbutyrate (HMB) supplementation during resistance-training on markers of catabolism, body composition and... - PubMed - NCBI
*14:The efficacy of a β-hydroxy-β-methylbutyrate supplementation on physical capacity, body composition and biochemical markers in elite rowers: a rand... - PubMed - NCBI
*15:The Effect of β-Hydroxy-β-Methylbutyrate on Aerobic Capacity and Body Composition in Trained Athletes. - PubMed - NCBI
*16:The Effect of a 12-Week Beta-hydroxy-beta-methylbutyrate (HMB) Supplementation on Highly-Trained Combat Sports Athletes: A Randomised, Double-Blind... - PubMed - NCBI
*17:Equivalent Hypertrophy and Strength Gains in β-Hydroxy-β-Methylbutyrate- or Leucine-supplemented Men. - PubMed - NCBI
*18:The effects of 12 weeks of beta-hydroxy-beta-methylbutyrate free acid supplementation on muscle mass, strength, and power in resistance-trained individuals: a randomized, double-blind, placebo-controlled study
*19:Interaction of Beta-Hydroxy-Beta-Methylbutyrate Free Acid and Adenosine Triphosphate on Muscle Mass, Strength, and Power in Resistance Trained Indi... - PubMed - NCBI
*20:The effects of supraphysiologic doses of testosterone on muscle size and strength in normal men. - PubMed - NCBI